時代を超えて星が降る 「ONE MORE KISS」が繋ぐ星の流線
3月27日、A.B.C-Zの新曲「Black Sugar」が発売されました。
作詞作曲はKinKi Kidsのプロデュースでお馴染みの堂島浩平さん。ポニーキャニオンから「A.B.C-Zに変わった曲を作って欲しい」と雑な依頼をされて出来上がった「Black Sugar」は、今までの明るく健康的なイメージとは真逆の耽美的な世界観で“新しいA.B.C-Z”が表現されています。
A.B.C-Z「Black Sugar」、本日発売。作詞作曲した楽曲がシングルになるのは、ジャニーズにおいてはKinKi Kids「カナシミ ブルー」以来(嬉!)。編曲はCHOKKAKU氏。彼らの魅力がバチバチに出まくりますように。初回盤Bには盟友・西寺郷太くん作「ONE MORE KISS」収録。是非!
— 堂島孝平 (@Dojima_Kohei) 2019年3月27日
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今までのA.B.C-Zにない、イキった、カッコつけられる曲として作られた「Black Sugar」は当初シングルの予定ではなかったそうです。堂島さんのプロデュースする“今”A.B.C-Zにあてがうべくして作られたこの曲は、メンバーからも「曲という“役”を演じるような感覚になれる」と新しい評価を得ています。
「Black Sugar」はc/wも豊富で、2016年ABC座で披露された、Nona Reevesボーカル・西寺郷太さん作詞作曲「ONE MORE KISS」、2018年ABC座で披露された「SHOWTIME!」「A.B.C-Z with LOVE」、編曲・白井良明さんの新曲「いいね!」とバリエーションに富んだ楽曲が揃っています。
今回取り上げたいのは「ONE MORE KISS」。
この曲は元々郷太さんが少年隊のために書き下ろし、陽の目を浴びるまで15年掛かった幻の楽曲です。
「ONE MORE KISS」と少年隊
郷太さんは元々少年隊の大ファンで、ラジオ局でたまたま錦織さんと鉢合わせたことをきっかけに、錦織さんから少年隊への提供を依頼され、作詞を手掛けたのが2001年少年隊PZテーマ曲「プリマヴェラ〜灼熱の女神〜」。こちらは作詞だけの参加だったため、作詞作曲の両方で提供したいという思いから作られたのが「ONE MORE KISS」でした。
2019年3月16日、郷太さんがゲスト出演されたA.B.C-Zのラジオレギュラー番組「A.B.C-Z Go!Go!5」でこの補足が語られていました。
この時点で郷太さんが書いていた「ONE MORE KISS」は1番まで。まずはデモと1番を提出してから、2番の歌詞を少年隊と相談しながら書く予定だったのが、当時連絡先を交換していた錦織さんの携帯電話番号を誤って登録していたため、電話をかけても着信が繋がらず。元々少年隊の大ファンだった郷太さんは強くもいけず、そのまま10年以上の時が経過してしまい、少年隊の曲としてのリリースは叶わずに終わってしまいました。
A.B.C-Zと「ONE MORE KISS」
時は流れて2016年、当時神奈川KAATで演出・錦織さん、音楽・郷太さんで作られた舞台「JAM TOWN」を河合くんと戸塚くんが観劇し、感銘を受けた河合くんがその場で「こんなミュージカルを作りたい」と二人に話したことで同年のABC座「株式会社応援屋!!~OH&YEAH!!~」の上演が実現。
このときに郷太さんは錦織さんから「まずは曲だ。曲があれば舞台が作れる」と言われて作った曲が「サポーターズ」。こちらは一足先に2017年年末*1で音源化済み。応援屋の楽曲を作っていくにあたって郷太さんが錦織さんに持ってきたのが、10年以上寝かされていた「ONE MORE KISS」でした。
少年隊とA.B.C-Z
レコードよりも先にVHSでデビューした少年隊と、CDではなくDVDでデビューを果たしたA.B.C-Z。20年以上続いた少年隊座長舞台「PLAY ZONE」のショースピリッツは、A.B.C-Zがデビューから毎年上演している舞台「ABC座」へそのまま受け継がれています。
過去既に他のジャニーズグループへ楽曲提供をしている郷太さんが、A.B.C-Zにと「ONE MORE KISS」を渡してくれたのは、少年隊の意志を継ぐA.B.C-Zだったからこそ叶ったのではないでしょうか。*2
「ONE MORE KISS」の1番は少年隊に、そして2番はA.B.C-Zのために書き下ろされました。少年隊でのリリースは叶わなかったものの、少年隊のために作詞作曲した楽曲を、15+2年の時を経て、少年隊の意志を継ぐA.B.C-Zの曲として今春音源化を果たしました。*3
A.B.C-Zの「ONE MORE KISS」
先に書いたように、「ONE MORE KISS」の2番はA.B.C-Zのために書き下ろされました。
「トロピカルな天気雨に打たれて はしゃいでいたあの頃の無邪気さはないけど」は少年隊名義でのリリースは叶わなかったこと、次の「時をかけて 学んだことだってあるのさ 大事な人 まだ繋がりあう運命」は15年の時を経てしまったけれど、それはJrとして下積みの長いA.B.C-Zの境遇とも重なって、今の時代にA.B.C-Zの曲としてリリースされることに意味があったのだと胸を張る誇らしさ、また、時代を超えてまた少年隊と繋がれたことの嬉しさも併せて表現していると解釈できます。
郷太さん曰く、サビの「ONE MORE KISS~」のソロは歌割も決めていて
東山「そう今までの」→橋本
植草「恋は忘れなよ」→戸塚
錦織「しなやかな腰つきで」→河合
だそうです。
そしてこのパートがA.B.C-Zの人数と同じ「5つ」あったことは偶然で、やはりこの曲がA.B.C-Zに届けられたのは運命のように感じられます。
1番の歌詞もいま改めて読み返すと、ここまでピンポイントで1人をグイグイ口説くような歌詞は現代では書かれなかったと思うし、1曲約4分の中で15年以上の時が流れている楽曲もなかなかないと思うので、エピソードを知ることでより味わい深く楽しめる楽曲になっています。
「2人のため 今夜“星”が降るだろう」
1番最後の「2人のため 今夜星が降るだろう」について。
夜に星が降るということは、夜空に浮かぶ星が落ちる、私はこれを流れ星と解釈しました。
流れ星といえば、「流れ星が消えるまでに3回願い事を唱えるとそれが叶う」という言い伝えが有名ですが、それになぞらえるならば「今夜星が降るだろう」は「今夜2人の願いが叶うだろう」と読み替えることができます。
ジャニーさんが持ってきてくれたA.B.C-Zのデビュー曲「Za ABC〜5stars〜」の中に“star”が入っていること、デビュー日翌日から上演していた舞台「ABC座」の劇場は日比谷・日生劇場。これを縦に並べて“日生”を“星”とも読ませ、初演えび座のタイトルは「ABC座星(スター)劇場」と名付けられたように、A.B.C-Zはデビュー時にジャニーさんから星のモチーフを授りました。
これら一連のエピソードは、夜空に輝く少年隊という星が時を経て流れ星となり、郷太さんの夢と共にA.B.C-Zの元へ辿り着いた流線を表しているようで、A.B.C-Zの元で「ONE MORE KISS」のリリースを果たしたことは、運命であり必然のように思えます。
夢を叶えるA.B.C-Z
「ONE MORE KISS」以外にもA.B.C-ZとABC座はさまざまな夢を叶えてきました。
長いJr.時代を経て見事デビューを果たしたA.B.C-Zの、A.B.C-Zではないifの世界を描いた2012年星劇場。
ジャニーさんの青春時代ともいえる、ジャニーズとアメリカで過ごした日々を「Never My Love」と共に記した2013年ジャニーズ伝説。
ジャニーズ退所以降ジャニーさんと再び仕事をすることが叶った2015年サンズ・オブ・ザ・マッシュルーム。
そして、15年の歳月を経てジャニーズの世界で輝くことを成し遂げた「ONE MORE KISS」の2016年株式会社応援屋。
A.B.C-Zの面白いところは、かつてはジャニーズに憧れる少年だった現アーティスト、過去にジャニーズとして活動していた先輩、そして事務所の設立者であるジャニー社長にも、ステージの上から夢が叶う瞬間を見せてくれる正真正銘のアイドルなところです。
あらゆる時代で「ジャニーズ」に夢を見て願いを抱いた様々な人たちの星となるA.B.C-Zの生き様を、これからもいち観客として見詰めていきたいです。
A.B.C-Zの更なる活躍をこれからも応援していきたいです!おしまい!
*1:4thシングル「終電を超えて〜Christmas Night/忘年会!BOU!NEN!KAI!」
*2:とはいえ応援屋の演出に錦織さんが関わっていたのがめちゃくちゃ大きいとは思いますが!笑
*3:Nona Reeves名義の円盤化は過去にされているそうなので、曲が世に出ることよりも、少年隊の存在をより濃く感じられる領域でのリリースに意味があったのだと思います。