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えりあし

思ったこと、残しておきたいこと、いろいろ

ABC座2015『サンズ・オブ・ザ・マッシュルーム』

A.B.C-Z 現場


今年は一幕が錦織一清さん演出の【THE PLAY】『サンズ・オブ・ザ・マッシュルーム』、二幕がジャニーさん監修の【THE SHOW】『We Love A.B.C-Z』の、舞台とショーの豪華二本立て!です。

今までと今年の大きな違いは、ジャニーさんのクレジットが【作・演出・構成】から【監修】に替わったこと演出をジャニーさんではなく錦織さんが手がけていること、そして演者に事務所以外の外部の人が携わるようになったこと*1
私はジャニーズ舞台はA.B.C-Zからなので、今までのジャニーズ舞台と比較しての話は出来ないのですが、「ジャニーさん色が薄まったジャニーズ舞台」であり「ジャニーさん以外の人が手がけたジャニーズ舞台」になり、けれど「ジャニーズ事務所を長く生きてきた人が手がけたジャニーズ舞台」と、今回のえび座は多様な捉え方が出来て面白いなぁと思います。

 

 


あらすじ


2015年に活動しているA.B.C-Z5人が演じているバンド「プラネッツ」が、ひょんなことから1966年にタイムスリップしてしまう、というお話。なので大きく分けると、「タイムスリップ前の現代」「タイムスリップした過去」「そこから帰ってきた現代」の3つが主な時代軸となります。
タイムスリップで有名な作品といえば『バックトゥザフューチャー』。映画の公開は1985年なのですが、劇中にもこの作品を挙げる台詞があります。
私は今回のABC座を「バックトゥザフューチャー×ジャニーズ伝説」の系譜作品、という目で見ています。

プラネッツがタイムスリップした1960年代というのは、前作前々作の「ジャニーズ伝説」とまったく同じ時代です。ジャニーさんが一番キラキラしていたという時代を、前作では「ジャニーズ」という実在したグループを事実に沿って脚色を加えた物語として、今年はそれを「プラネッツ」というバンドでフィクションの世界を創りあげました。
2013年ABC座「ジャニーズ伝説」初演の年は、ジャニーズ伝説創立60周年の年でもあり、そのアニバーサリーにジャニーズ事務所の歴史を綴った舞台をA.B.C-Zが手掛ける。その事実だけでジャニーさんはA.B.C-Zに並々ならぬ特別な思い入れがあるのではないか、そう考えるのに十分な仕事をジャニーさんはA.B.C-Zに与えているように私には感じられました。
1960年代を生きた人達をA.B.C-Zが演じるのではなく今年は、2015年現代を生きるA.B.C-Zにタイムスリップというフィクションを加えて、現代の目から1960年代を体感させる。それはまるでジャニーさんが、ジャニーさんの生きてきた時代を、A.B.C-Zに肌で歴史で感情でわかって欲しい、という思惑が込められているように感じられました。

 

 


3つの視点


「タイムスリップ前の現代」「タイムスリップした過去」「そこから帰ってきた現代」と3つの時代があるように、この作品は3つの視点から物語を追うことが出来ます。
まず物語の主人公である「プラネッツ」の5人、そして現代から過去へと一緒にタイムスリップしてしまった白猫「ラム」、多くの謎に包まれているレコード屋を営む「五郎」の3つです。

プラネッツ視点は物語通りですね。白猫を助けようとしたら過去へタイムスリップしてしまい、そこでの成功と衝突、リョウスケの死と生還から、現代へと帰ってくる。
白猫・ラムは舞台唯一の女性である蔵下穂波さんが演じていますが、紅一点と同様に一匹だけ人外です。観客と近い視点を持つプラネッツとは異なる、「人間じゃない」視点からラムは自分の世界を物語っています。
そして五郎さん。五郎さんは上に挙げた3つの年代、全ての時代を生きている人です。ジャニーズ舞台といえば、演者と役名が同じ名前であることが第一だと思うのですが、五郎さんだけは違います。そこの話もまた追々。

 

 


ジャニーズ×プラネッツ


2013,2014年のABC座ジャニーズ伝説と並べて考えます。

ジャニーズにとってのヨウセイ・ミズキとその兄、ビング・クロスビー、ディボーソンなど、ジャニーズをスターへと導いてくれた人達、そして本編には描かれていませんでしたが、ジャニーズ四人と共に行動していたであろうジャニーさん、それらの人達全てを五郎さんに当てはめて見ています。
劇中で五郎さんの生活を心配するプラネッツに五郎さんが「他人の家の張り紙なんか気にしなくていい」という台詞があるのですが、プレイヤーはプレイヤー活動にだけ勤しめばいい。そんな風にも受け取れます。
五郎さんは元バンドマンで、劇中でも五郎さんがギターを弾いてバンドを合わせるシーンがあるにも関わらず、五郎さんがプレイヤーとして売れていくことは一切ありません。プレイヤーはプラネッツの5人、五郎さんは面倒を見てくれるし、おそらく仕事の手配もつけてくれています。五郎さんは裏方的役割を全て担ってくれています。その姿勢に、今尚メディアに顔を出さないジャニーさんと重なるところもあるように思います。


ジャニーズは解散してしまいましたが、プラネッツは解散しません。
私が思うにこの作品は「プラネッツが解散しないこと」がものすごく大事な要素なんだと思います。
タイムスリップ前の現代では「ギクシャクした関係がサウンドにも出ている」といわれてもいて、音楽の方向性を模索していたプラネッツは、過去にタイムスリップすることで自分達の行き先を見つけることに成功します。それは恐らく現代にいただけでは見つけられなかった道で、タイムスリップしたからこそ未来に繋げることが出来た。
成功が続くと衝突が生まれ、その衝突に奇しくも合わさって起きたリョウスケの事故死を、猫の不思議な力を使って生還させる、というフィクションの力を大きく使って、プラネッツはその存続を保つのです。
そして一幕最後では、5人のプラネッツとして5人揃って現代へと帰ってきます。
五郎さんは元バンドマンですが、五郎さんも昔に同じ「プラネッツ」という名前でバンド活動をしていましたが、当時のメンバーのひとりである酒屋の息子は既に亡くなっています。五郎さんはもう自分自身の「プラネッツ」にはなれないのです。戻れなくなった過去を持つ五郎さんと、戻る未来を用意されたプラネッツ。同じ名前を持つバンドが、自分の持つ苦い過去の過ちを侵さずに済んだこと。そして、解散してしまったジャニーズ4人と、4人から5人へなったことでデビューを果たしたA.B.C-Z。ふたつの過去と未来が重なって見えます。

 

 

 

白猫「ラム」

 

もしもラムを助けなかったら、もしもタイムスリップしなかったら、もしもラムがリョウスケを救ってくれなかったら。ラムには色んな「もしも」が含まれている、この物語のフィクション部分を担う存在です。

「猫は不思議な生き物だと人間はいうけれど、猫からすれば不思議なのは人間の方だ」

「ここだけの話、猫は人気者になりたい訳じゃありませんから」

「猫に不思議な力があるというのは神様本当ですか」

「2度救って貰ったこの命。2回分あなたに捧げても構いません」

「リョウスケを再び目覚めさせ、5人の若者を元の世界へお戻し下さい」

「神様お願いします!神様お願いします!神様お願いします!

唯一の女性で人外であるからか、現実とは一線を介した位置にラムは置かれています。猫の不思議な力を使ったラムはリョウスケと位置を立ち替わり、ラムのいた位置にリョウスケが現れ、何事もなかったかのように手を挙げて悼む4人に「よっ、元気?」とでも言うかのような軽さで以ってこの世に帰って来ます。リョウスケに命を救われたラム、リョウスケとだけ会話が出来るラム。

そんなラムが再びリョウスケの目の前に現れたときは、もう猫ではなくなっていました。夢を叶えた五郎さんのスタジオで、エプロンの下に尻尾を隠した、「ホナミ」という名前の一人の女の子。半世紀の時を越えて、夢を叶えた場所で3つの世界がまた結び合った。とてもロマンティックで素敵な演出です。

 

 

 

「五郎さん」という象徴

 

先に書いたように五郎さんは「ジャニーさん」の象徴であり、更に本編では「フミト=サターン」にも当てはまる存在です。

ジャニーズ舞台における演者=役名の法則を唯一無視した「黒坂五郎」という名前がまず象徴性の高さを表しています。

プラネッツの「マネージャー」として様々なライブハウスに掛け合ってくれたり、生活の面倒を見てくれたり、グループの心配を心配して声をかけてくれたり。五郎さんはずっと輪から少し外れたところからプラネッツのことを助けてくれます。

劇中ではタイムスリップしたてのフミトのハットを奪って被り、部屋の本棚の上に飾って置いてあり、50年後の現代でも赤から紫に色褪せてしまったハットをずっと被り続けています。「俺一人で楽しみ過ぎたんだ」という五郎さんの言葉に、「俺は一人で有頂天になっていただけなんだ」とフミトも自分を五郎さんに重ねています。

五郎さんのバンドのメンバーである酒屋の息子は死に、そしてフミトもリョウスケを失いそうになる。境遇もほとんど同じです。プレイヤーとしての五郎さんの夢は仲間が亡くなってしまった以上どうしても叶いませんが、スタジオを建てる、という五郎さんの夢をフミトは自分のことのように大事に扱います。その想いが強すぎて、自分たちが元にいた世界、本来の自分たちの世界を大事にしようとしたリョウスケと衝突してしまうのは悲しいですね…。

そんなフミトに対して現代に帰ってきた五郎さんは、元はフミトのものであった50年もののハットをフミトに被せ、穏やかな声でフミトを「リーダー」と呼びます。五郎さんの叶わなかった夢をフミトは達成させることが出来ました。

 「スタジオを作るのに50年も掛かってしまった」ジャニーズ事務所は1962年創立、2013年で50周年。ジャニーズ事務所の時代背景や年数と重ねているところも興味深いです。ジャニーズは50年の間数々のトップスターを輩出してきた一流の事務所であることは間違いないのに、50年の時を越えて現代へと帰ってきたA.B.C-Zが演じるプラネッツがオープン初日の初めての客になった瞬間、「夢が叶った」とこの作品は物語っています。ジャニーさんがA.B.C-Zのことを「ずっと待っていた」と言っているように聞こえてならないのです。*2

 

 

 

物語の解釈

 

本当は、五郎さんはすべてを知っていたのではないか、プラネッツはタイムスリップ先で死んでいたのではないか、すべて五郎さんの妄想だったのではないか、と色々と想像を巡らせていたのですが、観劇の回数を重ねたことと、追加された台詞と演出で物語はとってもシンプルだったことがわかったのですが、改めて書き起こしていこうと思います。

 

  • 「プラネッツ」と「A.B.C-Z

1幕冒頭でA.B.C-Zは登場しません」「プラネッツというバンドの誕生秘話」「タイムスリップして一回り成長して帰ってくる」「プラネッツがどうしてもやりたいって」「俺たちと同じ日生劇場でデビューになるんだね」とプラネッツ≠A.B.C-Zであることと同時に、プラネッツ≒A.B.C-Zであることを本人たちの口から発表されていますね。

 

  • 交通事故でタイムスリップ

タイムスリップのきっかけはリョウスケがラムを庇った弾みで起きます。車でタイムスリップ、というシチュエーションはまさに『バックトゥーザフューチャー』ですよね。ラムが「私のせいだよ」というのでタイムスリップの力の源がラムにあるんだと思います。それじゃあ帰りは一体?とここで詰まってうんうん唸っていたのですが、答えはものすごくシンプルでした。最後にラムが「車」と事故にあっていたんでした。ラムの願いは「リョウスケを再び目覚めさせ、5人の若者を元の世界に戻すこと」で、代償に2回分の命を神様に捧げます。最初は神様にお願いしていたラムですが、すっと立ち上がり、「いいえ、聞いて貰います」「私も頑張らせて頂きますから!!」と猫の不思議な力とラムの願いが無事に届いて、プラネッツは5人での生還が叶ったんですね。

 

リョウスケが死んだことの演出は、空っぽの0番に当てられたピンスポで表現されています。空っぽの0番に向かって語り掛けるフミト、0番を空けて歌う4人。

土管の上でラムが神様に願いを伝え、舞を踊り始めると、0番のピンスポはコウイチに向けられます。背景の映像は60年代でも現代でもなく、宇宙を彷彿とさせるような夜空。あの世とこの世の狭間で不思議な力を持つ猫の舞を引き継いで、コウイチが0番に当てられていたスポットライトを浴びながらひたすらに踊り続けます。そしてそのライトは、ぴょこん、と土管の上に現れた何事もなかったかのように気軽に手を挙げて挨拶をするリョウスケに帰っていきます。生き返ったリョウスケの浴びる照明は、0番の照明なのです。ここがねーーー美しくって!!素敵な演出です!!

 

 

 

オリジナルアルバム、初シングルCDリリースと、A.B.C-Zは今確実に変わろうとしてきています。そして、ジャニーさんも。その狭間の時間を共に過ごせていること、見させて貰っていること、有難いです。とってもとっても面白い。五郎さんのプラネッツは終わってしまったけど、A.B.C-Zのプラネッツは続いていくし、ジャニーズは解散してしまったけど、A.B.C-Zは5人になってデビューを果たし、今尚成長を続け、追い風を実感しつつある。

 

「時を越え5star」「繋いでいくstory」「夢と夢を繋げ 遥かなstory 」「続いていく伝説」

 

過去から蘇った今を生きるA.B.C-Zの今後の活躍も楽しみにしています!

 

 

*1:といっても曽我さんは元ジャニーズの方ですし、蔵下さんもつか×ニッキ×戸塚舞台ではお馴染みとなりつつあるので、あまり外部外部していないのですが…

*2:ヤッチンさん担の方から見たら、また違ったジャニーさんと五郎さんのドラマがあるんですかね?気になるなぁ…!