えりあし

思ったこと、残しておきたいこと、いろいろ

渋谷の地下から愛を叫ぶ

タワレコ星野源とB'z、渋谷マルイに菅田将暉、109メンズ館にDISH。日本か韓国かわからないけど、駅に向かうまでの片道だけで男性アイドルと女性アイドルのアドトラをそれぞれ2台は見た。ハチ公改札口を出るとスクランブル交差点を見下ろすように巨大モニターや巨大広告がでんでんでーん!と、その時々のアーティストやアイドルのリリース日のお知らせをしてくれる。渋谷駅近辺をすこし歩くだけでアイドルやアーティストの名前はごまんと目に飛び込んでくる。

 

山手線渋谷駅ハチ公改札口を出るとKis-My-Ft2北山宏光くんの主演舞台『あんちゃん』のでかでかとしたポスターがある。そこには、1年ともう少し前に橋本くん河合くん主演舞台『コインロッカー・ベイビーズ』のポスターがまったく同じ場所に鎮座していた。そのポスター前の階段を下ると、東急東横線の乗り換え口へと続いていて、長い長い地下通路にA.B.C-Zがいた。

 

 

6月18日の20時半頃、ツイッターでポスターの貼り替えを行なっていることを知り、21時過ぎに該当場所に着いたら、明らかに目的が同じであろう人たちがあちこちに散らばっていた。その証拠に、ツイッターにはいま目の前に広がっている景色と同じ風景たちを、奥行きを表現しようとしてる人、メンバーごとにまとめて載せてる人、どうにか通行人を避けたいけどうまく避けきれない人、綺麗にポスターだけを撮れてる人、撮る人によって様々な切り取られ方をしたえびちゃんたちがたくさん流れてきた。

私はたまたま渋谷にいたからすぐに立ち寄れたけど、ここにいる人たちはみんな、この約30分の間に自分と似たような経緯で此処に足を運んで来たのだと思うと、えび担が都心部に多く生息しているのか、はたまためちゃくちゃフットワークが軽いのかわからないけど、なかなかに興味深い空間だった。

 

 

突然だけど、星野源っているじゃないですか。SAKEROCKで、ドラマ逃げ恥の平匡さん役の、星野源

私が初めて星野源の名前を耳にしたときは今から5,6年前で、なんてことない仕事合間の雑談に職場の女性が「私、星野源が好きなんだ」と言っていたことが始まりだった。顔が好きなのか音楽が好きなのか今はもう忘れてしまったけど、多分どっちもだったと思う。塩顔が好きって言ってたし。ドラマ逃げ恥もSUNもまだこの世に存在してなかったけど、そのときにはもう星野源っていいらしい」という情報が、その人だけじゃなくて、たまたま通りすがったインターネットや、友達のなんてことないつぶやきからもちらほら触れる機会があった。テレビや映画や音楽から星野源を知らなくても、誰かの話題にこんなにも上がっているのだから、星野源は巷で人気なんだろうな、と認識していた。でも、私の中にあったのは星野源っていいらしい」という情報までで、「星野源」本人に対するイメージは、誰かの言葉を経由してでしか持ち得ていなかった。

星野源っていいらしい」ことはわかっていたけど、それだけの感覚で星野源のCDを買ったり、星野源を目当てに映画を観に行ったりはもちろんしなかった。ファンとは確実に呼べなくて、でも全く知らないコンテンツでもない、私がそうでないだけで既に彼はある一定の層から人気があることを知っている、なんとも距離のある存在。でも、ゼロじゃない。

www.hoshinogen.com

気付くと私は『YELLOW DANCER』をiTunesで購入していた。星野源が紅白に出場してから、逃げ恥が始まる前の頃くらいに。

『YELLOW DANCER』は曲よりジャケットのことが先に記憶にある。なんなら最初はジャケットの印象しかなくて、あのデザインのジャケットが星野源のアルバムのものであることは大分遅れて知った。『YELLOW DANCER』のジャケットは、ネットだか街中だか、とにかく何かの折に、日常の景色として自然と私の視界に入ってきていたのだ、いつの間にか。それを私は覚えていて、あのジャケット=YELLOW DANCER=星野源のアルバム=星野源=職場の人が好きって言ってた…って、いつかの記憶が数珠繋ぎになって、気付けばiTunesの中にあのジャケットの姿があった。*1

星野源っていいらしい」「でもまあ別に買うほどでは」な状態から、気付けばしっかりダウンロードで購入していて、でもこの間には5,6年の月日が流れている。購入してから思い出したのが、そういえば一時期『地獄でなぜ悪い』のMVを動画サイトでめちゃくちゃ見てた時期があったこと*2や、友達に誘われてアニメ映画『聖☆お兄さん』を観に行ったときのブッダの声優と主題歌が星野源だったし、その友達もがっつり星野源ファンだったことなんかが芋づる式に思い出されてきた。なんやかんや、私の日常に星野源は定期的に現れていたのだ。

 

 

渋谷駅地下の東急東横線田園都市線通路を通る人は、間違いなくめちゃくちゃたくさんいるだろう。日曜夜でもひっきりなしに人が通っていたんだもの。何十万人もの人がポスターの前を通り過ぎるけれど、その中でポスターに写っているひとたち=A.B.C-Zだと結びつく人の割合は、正直めちゃくちゃ低いと思う。もし運良くA.B.C-Zを知っていたとしても、あの場所には入れ替わり立ち替わり新しい広告が飾られているだろうから、気付かないまま掲載期間が過ぎてしまうことだって充分にあり得る。渋谷に広告なんて、私が冒頭で挙げた名前たちよりもっとたくさん、それこそ星の数ほどあるのだから。

それでも、通勤通学ラッシュや放課後のお出かけ、仕事帰りのちょっとした寄り道、残業終わりにくったくたな体をどうにか引きずりながら、はたまた終電間際の駆け込み乗り換えだったりオール明けの早朝だったり、これから家族友達好きな人と会いに行くための通り道だったりと、あの通路を通る人たちの人の数だけある日常風景の少しの期間に、A.B.C-Zの姿がある。その事実に、ちょっぴり、だいぶ、とっても、ワクワクしている。

その人たちの中には、数年前のワーホリやtwinkleコンのポスターを見かけていたり、Reboot!!!のシブツタジャックを目撃していたかもしれない、アウデラやちゃんずーやラジオやゲストで、なんとなく耳にしたことある程度の子たちが、あのポスターが視界に留まることでやっと個体として認識されるかもしれない。もしポスターを通りがかった時は目に入ってこなくても、地上に出たタイミングでアドトラが通りがかったりしたら、なんだ今の見たことある!ってデジャヴだと勘違いしてしまうかもしれない。

私がかつて目に/耳にしていた星野源に対するなんてことない情報が、無意識のうちに自分の中で蓄積されて、何かの拍子でぱんっとはじけ、アルバムという確かな実態を自らの意思で手元に手繰り寄せたように、あの地下通路は新しい「好き」の物語が生まれる可能性をたっぷりと秘めている。知られていないってことは、これから知って好きになる可能性を大きく孕んでいるということだ。私は今のA.B.C-Zを好きだから、「売れて欲しい」「もっと大きくなって欲しい」という気待ちはさほど持ち得ておらず*3、でもA.B.C-Zを好きになるのってとっても楽しくてとっても幸せなことだから、ひとりでもその幸せを体感できる人が増えるのは、世界環境的にも喜ばしいことだなあと心から思う。

他のジャニーズグループと比較してしまうと、A.B.C-Zはリリースのたびに必ず大きな広告を打たれてきたわけじゃない。けれどジャニーズの外の世界では、どんなに優良なコンテンツでも、陽の目を浴びられないまま消えていくものたちは、多分結構随分、ある。

 

兎にも角にも、このリリース期間にめちゃくちゃビジュアルの仕上がったA.B.C-Zの皆さんたちが、なんの所縁もない方達の日常に混ざり込む機会を与えられたいまという時間に、たまらなく気分が高揚する。ポスターを見て、今すぐアルバム購入に至るのは難しいかもしれないけど、誰かのいつかの未来で、記憶の糸が繋がるきっかけに、あの地下通路の景色があるかもしれない。

 私にとってA.B.C-Zは最新の今が一番かっこいい人たちだけれど、今この瞬間はただ通り過ぎるだけだった人たちの中にが、今よりもっともっとかっこよくなったA.B.C-Zに恋をして、「そういえばあのときの…!」ってドラマティックな運命に胸をときめかせる未来を想像する。その未来は来年再来年、5年後10年後かもしれないし、明日や今日、1時間後や5分後かもしれない。リリースって、知らない新しい世界に飛び出すのって、ドキドキワクワクするね。夏はもうすぐだ。

 

 

 

*1:ちなみに購入にまで至ったのは、'15年ジャニーズワールドの橋本五関塚田の楽屋で塚田くんが星野源の新しいアルバムを流していた、と雑誌で目にしたのが最後の一押しだった。ありがとう、塚田くん。

*2:「このMV面白い」ってインターネットで好きな人がオススメしてた

*3:売れていく過程でそのグループから離れてしまった過去があるので